東京高等裁判所 昭和26年(う)1356号 判決
本件控訴の趣意は末尾に添付した弁護人作成名義の控訴趣意書と題する書面の通りで、これに対し当裁判所は次のとおり判断する。
第三点
原判決は昭和二十五年六月四日施行の参議院議員選挙に際し同年五月六日頃被告人は新潟県南魚沼郡湯沢村音羽屋旅館に隅谷友一外十数名の参集を求め選挙対策会議を開催するに当り、右選挙に全国区から立候補した八子音次郎、地方区から立候補した関ツネの臨席を得て、選挙対策協議を行つた席上飲食物を会集者に提供して選挙に関し飲食物の提供をしたものである旨判示しているがその協議が如何なる内容のものであるかが示されていない。又これを認めた証拠についても、その標目を掲げるだけでその内容が引用していないので、如何なる事実を選挙対策協議と認めたものかもこれを知ることはできない。しからば候補者が臨席していたことは示されていても、選挙対策協議を行つたという単なる抽象的な判示だけでは、選挙に関するものであることは推認することはできても、果してそれが選挙運動であるかどうかを識別することはできない。而して公職選挙法第一三九条は何人も選挙運動に関し飲食物を提供することはできないというのであるから、選挙運動に関するものであることを判示しない原判決は犯罪の構成要件を具備しない理由不備のものであると認めざるを得ない。しかしてこのような理由不備は判決に影響のあることは勿論であるから論旨は理由があり、原判決は破棄すべきものである。而して本件は当審において直ちに判決するのは適当でないと認めるので、他の論旨については判断を省略して刑事訴訟法第三九七条第四〇〇条本文に則り主文のとおり判決する。